千駄ヶ谷の駅を出ると、
落ち葉が雨に濡れて鮮やかだった。
まるで錦絵のように飾られた、きらびやかな道を、
写真を撮りながら、てくてくと歩く。
その中庭の落ち葉は、苔の緑に映えて、なお美しい。
ここの舞台に来るのは何年振りか。
前回来たのがいつか、もう思い出せないくらい前だ。
あの時は確か、南原さんの狂言を見に来たのだった。
今回の能は、事代主(ことしろぬし)という神様の舞台。
その幽玄な世界にどっぷりと浸る。
歴史を超えた、祈りのような、
聖歌にも似た、音の世界、
言葉の世界。
外に出ると、今日から12月の空。
2021年という不思議な響き。
この馴染めなさは、なんだろう。
もうあと1ヶ月で終わるというのに。
国立競技場から神宮球場、外苑へとぶらぶら歩く。
夏にはオリンピックで湧き立っていたであろうこの場所。
今はもうすっかり、年末の空気だ。
ここの喫茶店は、ビールが飲めるのが嬉しい。
以前は小さなグラスビールだったのだが。
久しぶりに来たら、プレミアムモルツのジョッキになっていた。
進歩だ!
平日の、夕方4時前という時間だが、
喫茶店にはたくさんのお客さんがいた。
おばさま方のグループが多い。
それぞれにおしゃべりを楽しんでいる。
その姿をぼんやり眺めながら、ビールを飲んでいると、
先ほど見たばかりの能の、最後の一節が、
頭の中でリフレインした。
道ある御世のめでたし
道ある御世のめでたし