朝がきました。
とうとう、4日目。チェックアウトの日です。
実は、その朝。
どうしようかなと、ずっと考えていたことがありました。
それは、朝湯です。
やっぱり湯治に来たからには、朝湯に入らなくちゃな、と。
旅館に来た時には、考えていたのです。
朝は早起きして、まずは近くの森を散歩し、
軽く運動をしたら、ゆったりと朝湯につかり、
その後で、ゆっくり朝食を食べて・・・。
なんていう妄想を、初めは思い描いていたのですが。
実は私、朝が苦手でして。
放っておくと、昼まで寝過ごすタイプです。
せっかく湯治に来たのだから、無理しちゃいかん。
朝の時間は気にせず寝よう、ああそうしよう。
と、いつの間にか路線変更。
3日目の朝、せっかく早い時間に、茶トラに起こされた時も。
ああウグイスの声が聞こえる…なんて思いながら、
朝食の時間まで、ぼーっと過ごしてしまう始末です。
結局、朝食を食べた後で、腹ごなしに湯に浸かる、
という、脱力ルーティーンに変わってしまいました。
ただ、それでも。
やっぱり「朝湯」という響きには、魅力がありますよね。
チェックアウトの前、せめて最後の朝くらいは、
無理をしてでも、朝湯に入っておいたほうがいいのではないかと。
そんな気持ちも湧き出まして。
どうしようかなと、ずっと迷っていたのです。
でも、迷っても考えても結論は出ず。
前夜は結局、
「もし明日、早い時間に目が覚めたら、朝湯へ行こう」
なんて思って寝たのでした。
すると、なんとなんと。
まるでその思いが通じたかのように。
朝、ニャーニャーと鳴き声が。
はて、また茶トラの目覚ましか?
と思いきや。
今度は、黒でした。
寝呆け半分で体を起こすと、
布団の上を、黒がのっしのっしと歩きまして、
足元に横たわって、こちらを見ました。
「おい、朝湯に行くんじゃなかったのか」
そう言っているようです。
時計を見ると、6時前。
今から朝湯につかって、戻って来れば、
7時半の朝食に、ちょうどいいタイミングです。
まったく、こんな時間を見計らって起こしてくれるとは。
さすが温泉旅館の猫。素晴らしいサービスです。
私は布団から抜け出して、タオルと着替えを持ち、
いざ朝湯へ、憧れの朝湯へと、部屋を出たのでした。
あ、ちなみに。
部屋を出るとき、こたつを覗いてみると、
ちゃんと茶トラがいましたよ。
おはよう。