部屋でこたつに入ったまま、持ってきた文庫本を読んでいたら、
ちょうど温泉の話が出てきました。
このページです。
「温泉は地球ダシのお吸い物」という表現が面白いですね。
ここ、ぬる湯温泉のお湯に感じられる酸味も、地球ダシのひとつかもしれません。
銀色夏生さんの「つれづれノート」には、色んな温泉が出てきます。
その中でも印象的でよく登場するのが、新潟にある、ぬる湯の温泉で。
銀色さんは「瞑想温泉」という愛称を使って書かれているのですが。
それはきっと、貝掛温泉だろうと思うのです。
実は、貝掛温泉というのも、目に効くことで有名な温泉だそうで。
私が今回、ものもらいを治そうと思って、効能のある温泉を調べた時に、
初めは貝掛温泉に行くつもりだったのです。
でも貝掛は、ちょっと高級な感じで、値段もお高いのですね…。
それで調べているうちにだんだん気が変わり、最終的にはここ、
福島のぬる湯温泉に来たのでした。
こちらは、本当に昔ながらの、素朴な湯治宿ですので。
でも、いつか貝掛温泉にも行ってみたいなと思います。
5時半になりました。
そろそろ夕食の時間だなあ、と思っていたら、
茶トラがのっそり、こたつから出てきました。
お目覚めのようです。
茶トラは、うーん、と体を伸ばし、丹念に毛づくろいをすると、
戸の隙間から、するりと廊下へ出て行きました。
どこかへお出かけのようです。
一方、布団の上では、まだ黒がぐっすりと寝ています。
そろそろ6時半が近づいてきました。夕食の時間です。
黒ももうすぐ眼を覚ますのかな。
なにしろ、昨日もその前の日も、私が夕食の後で外をぶらぶら散歩すると、
必ず黒がいましたからね。
きっとその時間に外で遊ぶのが、この黒猫の、
毎日の生活パターンに違いありません。
だから、もうすぐ目を覚ますはず。
ぐっすりと眠り込んでいる黒を見ているうちに、
「雨の日の猫はとことん眠い」という本のことを思い出しました。
昔、そんなタイトルの本があったのです。
私がまだ十代の頃、もう何十年も前のことですが。
いろんな動物の習性について解説した、読み物でした。
ちなみにタイトルの「雨の日の猫はとことん眠い」というのは、猫の習性です。
猫という動物は、雨の日になると体の代謝活動が低下して、
眠くなるようになっているのだそうです。
もともと野生動物だった時に、雨の日には獲物を捕ることもできないので。
そういう時は眠くなり、動かなくなることで、
体のエネルギーロスを抑えるようになっているのだ、と。そういう話でした。
といっても、私は別に、この本を読んだわけではないのですけどね。
確か新聞広告で見たのです。
でも、妙に印象に残るタイトルで、未だに時々思い出します。
雨の日の猫はとことん眠い、と。
それにしても、この黒猫はいつまで眠り続けるのだろう。
今日は別に、雨でもないのですがね。
そんなことを思っているうちに、廊下に女将さんがやって来ました。
夕食の時間です。
私は黒を部屋に残して立ち上がり、はーい、と返事をして食堂へ向かいました。