そうして1時間ほどぬる湯につかり、
部屋に戻ってぼーっと寝転んでいると、あっという間に6時。
廊下にスリッパの音がして、女将さんの呼ぶ声がしました。夕食の時間です。
はーい、と返事をして、部屋を出ます。
食堂に入ると、オビワン老人がいました。
カトウくんの姿はありません。
そうか、もうカトウくんは帰ったのだな。
彼の、つるんとした感じの横顔を思い出しながら、私は自分のテーブルにつきました。
これが、本日の夕食です。
天ぷらに、カツオのお刺身。
豪華です!
これはお酒が欲しいな、と思いまして。
女将さんにビールをお願いしました。
左上に写っている、緑のかき揚げが、とても美味しくて。
山菜のような感じだったのですが、何かわかりませんでした。
(後で女将さんに聞こうと思いつつ、忘れてしまいました…)
とても美味しい食事に満足しました。
ごちそうさま。
さて、夕食の後は、また散歩に出かけるとしましょう。
昨日と同じパターンです。
玄関から外に出ると、夕暮れというには、まだちょっとだけ早い時間。
でも、さっき帰ってきた時とは明らかに光の加減が違います。
ゆったりと、落ち着いた空気です。
昨日と同じように、坂の手前までゆるゆると歩き、
そしてまた、ゆるゆると戻ります。
すると、あれ?
旅館の方から、黒猫がやって来ます。
昨日と全く同じです。
きっと、この黒猫の、毎日の生活パターンなのでしょうね。
元気に喉をゴロゴロ鳴らしてやってきます。
さっき、玄関前のベンチで、グデ〜っと寝ていた時とは、えらい違いです。
撫でてやると、体を私に擦りつけて、周りをぐるぐる回ります。
本当に、昨日と同じです。笑ってしまうほど。
ひとしきり甘えた後、猫は草むらに入って行きました。
昨日と同じように。
そして私のズボンには、黒い猫の毛がびっしりとついていたのでした。
昨日と同じように。
それから、部屋に戻りまして。
ひたすら、こたつでごろごろしていました。
テレビをつけ、見るともなくニュースを見て。
持ってきた文庫本を、ぱらぱらとめくり。
ゆったりとした時間が過ぎて行きました。
やがて、8時半になりまして。
寝る前に、もう一度温泉に入っておくかと、部屋を出ました。
いつでも好きな時に温泉に入れるって、いいですね。
これぞ湯治の醍醐味、でしょうか。
この時間は、珍しく先客が誰もいませんでした。
また、後から入ってくるお客さんもいませんでした。
私はひとり、流れる湯の音に耳を傾け、
窓の向こうの暗闇を眺めるでもなく眺めながら、
ぬる湯と沸し湯を行ったり来たりして、満喫したのでした。
そうして1時間ほどぬる湯に浸かった後で、部屋に戻りまして。
ああ、もうすぐ10時だな、そろそろ歯でも磨くか。
と思ったところに、茶トラが現れたのでした。
なんか廊下で猫の鳴き声がするなーと思ったら、
するするっと部屋に入ってきました。
もう、いつでも部屋の引き戸を少し開けていますからね。
ご自由にお入りください。はい、いらっしゃいませ。
部屋に入ってきた茶トラは、畳の上でうーんと伸びをし、
膝の上に乗ってしばらくゴロゴロと喉を鳴らしていましたが。
やがて膝から降りると、こたつの中に入って行きました。
これまた、昨日と同じパターンです。
二日目となると、私の方も、もう慣れたものです。
出るのも入るのも、自由にしておけばいいのですからね。気楽です。
歯を磨いて布団に入り、ぐっすりと眠りに落ちたのでした。
こうして、二日目が終了です。