前回、3月の講義に出られた方に、僕はひとつお願いをしました。ぜひ次回4月の講義までに、パチンコに行ってみて下さいと言いました。行って下さった方は、ちょっと手を挙げてみて下さい。
はい、ありがとうございます。何か賞品取れました?スッちゃった?(笑)
パチンコというのは、球が釘に当たって色んな動きをします。釘があるから右に行ったり左に行ったりしながら進んで行きますよね。実は、この動きは、空間の中を素粒子が動いていくのと同じなんです。
先ほど説明したように、空間というのは、非常に小さいブツブツで出来ています。この、空間を構成しているブツブツを、「素領域」(そりょういき)といいます。
それで、素領域の中に生じたエネルギーが、素領域から隣の素領域へ、またその隣の素領域へと、ぴょんぴょん飛び移って行くんですね。この飛び移って行くエネルギーが、素粒子(そりゅうし)です。つまり、素粒子が空間の中を動いて行くというのは、より細かいレベルで見ると、エネルギーが素領域から素領域へと飛び移って行くことなんです。
素領域の中に生じるエネルギーには、色々な種類があって、性質が違います。ひとつの素領域の中に留まる時間が長いものと、短いものがあるんです。
素領域の中に最も留まりにくいエネルギーが、光です。物理学では、光のことを光子(こうし)と呼びます。一番小さい粒です。
光子は、ひとつの素領域の中にじっとできないんです。素領域から隣の素領域へ、またその隣の素領域へと、ぴょんぴょんすぐに飛んでいきます。
だから、素領域のレベルで見ると、光は直進してないんです。実際は、素領域から隣の素領域へ、ボコボコ移動している。そのボコボコ移動している光を、我々は網膜で、直進していると認識するんです。
例えばこうやって、レーザーポインタで赤い光を出すでしょ、そうするとほら、この赤い光が、あそこの天井まで真っ直ぐに届いているように見える。でも本当は、素領域から素領域へ、パチンコの玉みたいにボコボコボコボコ移動しているんです。
だから、パチンコ台の釘に相当するのが素領域だと思って下さい。光子という粒のエネルギーが、釘に当たっては次に進み、また次に進む。でも、それが我々の網膜に映ると、我々には、光が真っ直ぐに進んでいるように見えるんです。だから我々は、この世界を、光がどこまでも真っ直ぐに進む空間として捉えています。人類の共通認識として。
光以外の素粒子、たとえば電子とか陽子とか中間子とか、そういう質量(しつりょう)を持った素粒子は、ひとつの素領域の中にしばらく留まってから次の素領域へと移ります。
一方、光子は質量ゼロで、すぐに追い出されてしまう。そして次の素領域、次の素領域へと、さまよって行きます。
それでね、ここから面白いことが起こります。