アウトバーンというのは、ドイツの高速道路なんですが、制限速度がありません。
速度無制限なんです。
それで、ちょうどその頃に買ったばかりのオンボロの中古のスポーツカーで、思い切り飛ばしてやろうと思って走っていた時に、方程式が閃いたんです。
ちなみにその時、助手席は空でした。僕一人で運転してたんです。寂しいでしょ。(笑)
時速190キロとか200キロで飛ばしますとね、もう凄いんですよ、本当に。
まるで空中分解するんじゃないかと思うくらいの凄まじい風切り音とエンジン音と振動で、うわーっと走っていたんですが。
その時、突然ふっと静かになり、
音も振動もなくなり、
景色だけが後ろに流れていって。
アレ?もしかして、オレ死んじゃったのかな?
と思ったんですが、その時、額の裏側に、ある絵柄が浮かんだんです。
「額の裏側」なんて言っても伝わらないかもしれませんが、とにかくこの辺です。(額に手を当てる)
ここの内側に、変な絵柄みたいなものが見えたんです。そうとしか言いようがない。
これはやばいと思って、すぐ高速道路を降りて、その辺の村のホテルに入って。
晩飯食って、ビール飲んで、シャワーを浴びて、すぐにベッドに入りました。
でもその時、あ、あの絵柄はひょっとして方程式じゃないか?と思ったんです。それで、部屋にあった便箋にバーっと書いてみた。
それで、ああでもないこうでもないと計算していたら、なんと先ほどの、
シュレーディンガー方程式が出ちゃったんです。
つまり僕が見つけた方程式は、シュレーディンガーよりもっと奥深いところにある、元になる方程式だったんです。
ひえ〜と思って、そのクリスマス休暇中に論文を書いて、アメリカの学会に送って、すぐに認められました。
後にも先にも、僕が物理学の世界で見つけた業績はそれだけです。それだけで生きてます。学者って、一生に一つでも当てれば、もうそれだけで、後は遊んでるんです。(笑)
さも毎日研究しているように思わせといて、実は遊んでるだけなんですよ。
でも一応、そんな風に発見した僕の名前が方程式について「ヤスエ方程式」なんて呼んでいただいたお陰で、
「そういう奴ならきっと立派な学者なんだろうから、その人の名前を星にもつけよう」
と言って天文学会が誤解してくれて。(笑)
それで僕の名前を小惑星につけて下さったこともありました。
ただし、所有権はないんです。小惑星に「YASUE」という名前がついているだけで、その小惑星の土地を僕が持っているわけではありません。
もし持っていたら、皆さんに分譲して差し上げたいんですが。(笑)
今日はね、僕が見つけたその方程式と、湯川先生が考えられた素領域理論を組み合わせて話をします。