6月に、福島の「ぬる湯温泉」で湯治をしてきました。
その3日間の事を書こうと思います。
ぬる湯温泉は、福島駅から車で1時間ほど走った山の中にあります。
そこの温泉旅館「二階堂」に、3泊しました。
初日は、福島駅に昼ごろ着きまして。
近くのオリックスレンタカーで車を借り、まずは腹ごしらえ。
「味処みずほ」で、エビフライ御膳を食べました。
ソース、タルタルソースの他に、抹茶塩までついてます。
なかなか本格的ですね。とてもおいしいエビフライでした。
さて、そこから一路、山の中へ。
くねくねと曲がる細い山道を、奥へ奥へと走ります。
普段まったく運転をしない私のようなドライバーには、なかなか難しい道のりです。
見通しの悪いカーブが続くので、ところどころクラクションを鳴らしながら、慎重に走ります。
対向車が来たらどうしよう…来ないでくれ〜と祈りつつ、ハンドルを右へ左へ。
けっこう神経を使います。
8kmほど続く長〜い山道を抜けると、最後はこんな感じで、気持ちの良い小道になります。
鮮やかな緑がきれいですね。このすぐ先が、旅館「二階堂」です。
どうですか、この落ち着いた佇まい。
やっぱり木造の温泉旅館て、いいですね。
玄関に入ると、やわらかい、まんまる笑顔な感じの女将さんが、迎えてくれました。
スリッパに履き替え、細く続く廊下を歩いて、部屋へと向かいます。
この廊下の、みしみしと音を立てる木の感じが、またいいのです。
部屋に入ってまず驚いたのは、こたつがあったこと。
え?と目を疑いました。
もう6月も終わりなんだけど。仕舞い忘れてるのかな?なんて思ったりして。
(そうではないという事が、後でよく分かりました)
それから目についたのは、壁にかかった、このパッチワークでした。
女将さんの手づくりでしょうか。とてもいい感じです。
こたつに置かれた「御案内」も、あたたかみのある手書きでした。
夕食は6時か、ふむ。
今はまだ2時過ぎ、時間はたっぷりあります。
それでは早速、ぬる湯につかるとしましょう。
はい、これが温泉の感じです。
この写真は後日、誰もいない時に撮ったものです。
だいたい、感じをつかめていただけるのではないかと思います。
写真では、なんだか小さく見えますが、
実際の浴槽はけっこう大きく、広くゆったりとしています。
手前の、広い木の浴槽が、温泉です。
左からばしゃばしゃとお湯が出ていますね。源泉かけ流しです。
そして右奥にある浴槽は、沸し湯。普通のお湯です。
ぬる湯温泉は本当にぬるいので、沸し湯も用意されているのです。
それでは、いよいよ温泉につかってみます。
お風呂屋さんの定番「ケロリン」の黄色い洗面器で湯を汲み、
体にざばざばと掛け湯をして、入ります。
おお、本当にぬるい。温水プールみたいな感じです。
体をゆっくり湯に沈めると、まず驚いたのが、鉄の匂い。
とても強い、鉄の匂いがお湯から立ち上ります。
まるで、鉄棒に鼻を擦り付けているようです。
ということは、ひょっとして鉄分で茶色いお湯なのかな。
と思い、手ですくって見ると、きれいな無色透明。
それなのに、こんなに鉄の匂いがするなんて、驚きです。
そしてもちろん温泉ですから、硫黄の匂いもします。
お湯から立ち上る、ゆるやかな香りに包まれて、目を閉じます。
ざばざばと流れるお湯の音。
ゆったりと時間が流れ、湯が流れ。
目を開けると、向かい側は大きなガラス窓。
木々の緑が見えます。とても鮮やかな、6月の緑。
すばらしいです。
温泉には、私の他に、3人の先客がいました。
みんな若い男性です。30代の初めといったところでしょうか。
そのうち2人は、連れ合いのようです。
「いい景色だなー」
「いつまでも入ってられるね」
そんな風に、リラックスした感じで、2人でぽつぽつと話していました。
しばらくそうして、ゆったりと湯に浸かっているうちに、
そうだ、目を洗わなければ、と思い出しました。
ぬる湯温泉は、眼病に効くということで有名な温泉なのです。
そもそも、私がここに来たのも、昨年にできた「ものもらい」がなかなか治らず、目にいい温泉を探して湯治をしようと思ったからです。
のんびりお湯に浸かっているだけでは、いけません。
顔を湯につけ、お湯の中で目を開けてみます。
ものもらいが出来ているのは、左の瞼です。
だから手で右目を抑えて、左目だけ開きました。
こうしておけば、万一、お湯の影響がよくなかったとしても、左目だけに限定できます。
お湯の中で目を開くと、けっこう沁みました。
うわー、沁みる沁みる。これは本当に、目に良いのかな。
ちょっと不安になりました。
でもまあ、これを目的に来たわけなので。
ゆっくりつかっては、左目をお湯の中でパチクリ。
ゆっくりつかっては、またパチパチ。
そんな感じで繰り返しました。
するとだんだん、左目にゴロゴロとした違和感が出てきました。
むむ、しまった。これはちょっと、やりすぎたか。
やはり、刺激が強すぎたのかもしれません。
そこからは、もう目を洗うのはやめて、
ひたすらのんびり、リラックスしてお湯に浸かりました。
一時間ほどすると、だんだん体が冷えてきたので、沸かし湯の方に移ってみました。
すると、これが気持ち良いのなんの。
ぬる湯で冷えた体に、暖かいお湯が染み渡り、あ゛〜と声が出てしまいます。
ふと傍を見ると、壁に温泉の効能表がかかっていました。
やっぱり、鉄分がたっぷりの泉質なんですね。
そして、アルミニウムなども豊富に含まれている温泉なのだそうです。
ふーん、そうなんだ、と下まで読んでいくと、
えっと驚く内容に目がとまりました。
「pH2.9」と書かれていたのです。
pH2.9!
これはかなりの酸性です。強酸と言って良いと思います。
変なたとえですが、ワインと同じくらいの強〜い酸性です。
だから、このお湯を目に入れるというのは、すっぱいワインを目に入れるのと同じです。そりゃあ、沁みるわけだ…。
そう思うと、さらに不安になってきました。
左目のゴロゴロ感は、まだ続いたままです。
あんな風にお湯の中で目を洗って、よかったんだろうか。
大丈夫なのかな。
なんて思いながら、体が温まったところで、またぬる湯に移ります。
おおお〜、ぬるい。
沸し湯で熱くなった体が、お湯の中にほどけるような感じです。
これは、何度も繰り返したくなります。
そんな風に、ぬる湯と沸し湯を、行ったり来たりして。
二時間ほど満喫したところで、上がりました。
温泉から部屋へ戻る途中の廊下に、共同の洗面所があります。
そこの鏡で見てみると、左目が真っ赤に充血していました。
そして、目ヤニまで出ています。
うーん、これはやっぱり、やりすぎたのかもしれない…。
そんな風に思いながら、部屋に戻ったのでした。