朝からゆっくり、ぬる湯に浸かる。
なんとも贅沢で、幸せな時間です。
温泉には、二人の先客がいました。
若い二人の男性です。
初日に、湯船に浸かりながら窓の外の緑を眺め、
「きれいだなあ」
「いつまでも入っていられるね」
と話していた、あの二人なのですが。
この朝は、二人で湯につかりながら、
温泉談義のような話をしていました。
どうやら、二人であちこちの湯を巡り歩いているようです。
いいですね。
私も一緒にぬる湯につかり、目を閉じて、
その話を聞くともなく、耳を傾けていると。
一人がこう言いました。
「ここの温泉、酸味があるんだよ、飲んでみるとわかるよ」
へえ〜、と思いました。
これは確かめてみなければ。
すぐに試すのも、二人の手前、なんとなく恥ずかしいので。
二人が浴室を出て行った後で、やってみました。
ざばざばと流れ出る湯口へ手を差し伸べ、
すくって口に入れてみます。
驚きました。
確かに、とてもはっきりとした酸味を感じます。
それも、クエン酸の酸味です。
もう一度、お湯をすくって飲んでみます。
舌でしっかりと味わい、確かめます。
うん、間違いありません。
これは明らかに柑橘系、クエン酸の味です。
一体どういうことなのだろう?
私はひとり、ぬる湯の中で体を伸ばし、考えました。
温泉は、地中深くから湧いて出るものです。
そのお湯が、柑橘類のクエン酸を、なぜ含んでいるのだろう?
それともこれは、クエン酸に似ているけれども、
クエン酸とは違う、何か別の酸なのだろうか?
考えても考えても、分かりませんでした。
謎です。
壁に貼られている、温泉の成分表を、
上から下までじっくりと読み返してみました。
しかし、その成分表に、酸についての記述はありません。
金属類については、含有量などが結構詳しく書かれているのですが。
私は、うーむ、と深く唸りながら、1時間ほどで湯を上がり、
部屋に戻ったのでした。
部屋に戻り、こたつを覗いてみると、茶トラはいなくなっていました。
また、どこかへ出かけたようです。
私はひとりでこたつに寝転び、ぼーっとしていました。
おやつのお饅頭を美味しくいただき、お茶をのんでしまうと、
もう、することはありません。
昨日と同じように、11時半になるのを待って、車で出かけました。
今日のお昼は、お蕎麦と決めていました。
昨日、福島駅前のドトールで、ネットを調べて見つけたお店です。
「胡々里庵」といいまして、ぬる湯温泉の割と近くにありました。
温泉から、うねうねと細い山道を下りて、すぐのところです。
途中、観音さんのお堂に寄ってお参りし、
着きました、胡々里庵です。
ちょうどお昼時だったので、なかなかの混み具合。
しばらく待ってからカウンター席へ案内されました。
メニューはこんな感じです。どれもおいしそう。
しばらく悩んだ後に頼んだのは、
「きざみ鳥肉つけせいろ」(そば大盛り)
みずみずしいお蕎麦です。
そしてつゆは、蓮根のシャキシャキした食感と、じっくりとした鳥の旨味。
とても美味しかったです。ごちそうさま。
食事の後は、また昨日と同じコースです。
駅前のヨーカドーに車を停め、
ドトールでネットを見て時間をつぶしました。
さっきお蕎麦屋さんのロビーで、高湯温泉の広告が目についたので、
さっそく調べてみました。
なかなかよさそうですね。
明日の朝、旅館をチェックアウトしたら、高湯温泉に立ち寄り湯して帰ろうかな。
温泉のはしごなんて、贅沢じゃないか。
なんて思いました。
(でも次の日はすごい雨になってしまい、結局行きませんでしたが…)
さて。そんな風にドトールで時間をつぶしまして。
3時半頃に旅館「二階堂」へと戻ったのですが。
旅館へと向かう、その山道で、
思いがけない出会いがありました。
うねうねと続く急カーブを登っている途中、
あれ?何かいるぞ、
と気づいて、車を停めました。
なんと、おサルさんです。
野生猿の群れが、ゆうゆうと道を歩いているのです。
驚きました。
いやー、まさかこんな出会いがあるとは。
襲ってきたりしたら危ないので、窓を閉めて、
ゆっくりと車を走らせます。
すみませんね〜、ちょっと通らせてもらいますよ。
しょーがねーなー、さっさと通れよ、みたいな感じで、
お猿さんたちは、道を開けてくれました。
なかなか貴重な体験でした。